3月20日(土)13時より 観世会館で開催される四季彩能。
晴道先生が『熊野 村雨留』を勤められることになっています。
四季彩能―京八景―
ご案内状に添えるため、先生が書かれたお手紙を
お許しを得てここにご紹介させていただきます。
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拝啓
早春の候、貴家益々御清栄の御事とお慶び申し上げます。
平素は御芳情を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて此の度、京都観世会の新企画公演「四季彩能」におきまして、
『熊野 村雨留』を勤めさせて頂くこととなりました。
『平家物語』に取材した、禅竹の名曲です。
平宗盛の寵愛を受ける熊野は
故郷である遠江国池田宿に在る老母が病に就き、
命の中に今一度会いたいと、宗盛に暇を乞いますが許されません。
命の中に今一度会いたいと、宗盛に暇を乞いますが許されません。
宗盛は熊野の心を慰めようと、清水へ花見に出かけます。
街には春を楽しむ人々が行き交いますが
熊野の心は沈むばかりです。
熊野の心は沈むばかりです。
やがて清水に着き、観世音に母の命を祈っていると
宗盛の花見の宴が始まります。
宗盛の花見の宴が始まります。
熊野は無常を観じつつも、酌を取り舞を舞います。
折からの村雨に、早々に舞を止めた熊野は
折からの村雨に、早々に舞を止めた熊野は
村雨に面を濡らし、涙に濡れ
散る花を見ては母の命を散らすまいと、ひたすらに花をすくいます。
散る花を見ては母の命を散らすまいと、ひたすらに花をすくいます。
そして短冊に一首の歌を書きつけ宗盛に渡します。
いかにせん 都の春も惜しけれど 馴れし東の 花や散るらん
― どうすればよいのでしょうか。
いかにせん 都の春も惜しけれど 馴れし東の 花や散るらん
― どうすればよいのでしょうか。
この都の美しい春(宗盛の愛)も惜しいのですが、
今は私が慣れ親しんだ故郷の花(母の命)が散ろうとしている
今は私が慣れ親しんだ故郷の花(母の命)が散ろうとしている
ことのほうが惜しまれるのです ―
宗盛もこの歌に感じて暇を許し、熊野は喜んで母の元へ帰ってゆきます。
宗盛の愛も大切に思いながら、それでも肉親の命への思いを
宗盛もこの歌に感じて暇を許し、熊野は喜んで母の元へ帰ってゆきます。
宗盛の愛も大切に思いながら、それでも肉親の命への思いを
貫いた熊野の姿に、血のつながりの中にある本能的な愛に生きる
女性の本質を見る思いがいたします。
散る花の美しさに命の輝きを知る、無常の美意識をもって勤めたいと思います。
御多用の折とは存じますが、是非御高覧賜りますよう、御案内申し上げます。
敬具
平成二十二年春
散る花の美しさに命の輝きを知る、無常の美意識をもって勤めたいと思います。
御多用の折とは存じますが、是非御高覧賜りますよう、御案内申し上げます。
敬具
平成二十二年春
河村 晴道
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平宗盛は、平清盛とその長男重盛亡き後の、平家の総大将。
この曲では雅な役どころです。
少々頼りない人物として描かれた平家物語とはまた違った
一面を感じられるのではないでしょうか。
熊野と宗盛との心の交流もまた、花の情景のひとつとなって
舞台を彩ることでしょう。
一足早いお花見へ、『熊野 村雨留』、是非足をお運びくださいませ。
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平宗盛は、平清盛とその長男重盛亡き後の、平家の総大将。
この曲では雅な役どころです。
少々頼りない人物として描かれた平家物語とはまた違った
一面を感じられるのではないでしょうか。
熊野と宗盛との心の交流もまた、花の情景のひとつとなって
舞台を彩ることでしょう。
一足早いお花見へ、『熊野 村雨留』、是非足をお運びくださいませ。
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